第9回 新千歳空港国際アニメーション映画祭のGIF部門「NEW CHITOSE AIRPORT GIF AWARD 2022」
において、377の応募作品のなかから、審査員による厳正な審査を行い、各賞を決定しました。新設部門にも関わらず、たくさんの皆様からのご応募をありがとうございました!
(審査員のプロフィールはこちらをご覧ください ☞ https://site2022.airport-anifes.jp/competition/gif_award_outline/)
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— Futaba. (@futabaillust) June 24, 2022
授賞理由
GIFにおける、低解像度、短尺ループという条件で、こうも儚く尊い表現が可能なのか、という驚きがまずあった。イラストレーターの作者だからこそできる、絵画におけるフレームの視点を感じさせることが、大きな受賞理由のひとつである。影表現によって、「枠」そのものの存在を消すことに成功し、鑑賞者と作品の境界を飛び越えて、ひとつの空間を生み出す効果を引き出している。また、リアリズム絵画においては、背景のみならず対象そのものを描写してすべてを描き起こすことが一般的だが、本作は対象を水彩のテクスチャによる止め絵表現に留めている。それでいながら一見すると三枚ループのように見える影素材は、よく見ると枚数の多さに気づき、この贅沢さが作品の落ち着きの効果を生んでいるのだ。
これは近年におけるバロック的アニメに慣れてしまった者には遠い話にも感じるが、その風潮を大胆に放棄し、移ろいのみに注視した表現によって、時間や空気そのものに想いを馳せた俳句や印象派絵画にも似た深い趣を感じることができる。小手先から脱却し、自分の視点を貫く本作の姿勢を見習うべきではないだろうか。
(山田遼志/アニメーション作家)
流れが止まらぬ限り走り続ける
— 阿部舜 ShunAbe (@abemichelle) June 29, 2022
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授賞理由
まずGIFで、ここまでやるか!という作者の強い熱意に痛快さを感じた。この水車や絵のサイズ(おそらく小さいのだが)がまず気になるし、近所(おそらく)の川でこれを撮影してる姿の可笑しさを想像するとたまらない。映像構造そのものを再解釈した表現で、こんなに泥臭い表現はあまり見ることはなくなってしまったことや、このタイトルの愚直なまでのストレートさにも好感を持つ。電気を使わなくては作れなくなってしまった現代の作家に対して、映像そのものへの意思を問いているのだろうか。
惜しいのは、なぜ動画の絵がただ走ってる動画なのか。ループという条件をとり、水車の絵にして永遠に流れ続けるようにすればよかっただろうに。とはいえ今作者は走っているのかもしれない。そんな小細工でスマートな作品にする気はなく、このまま走り続けていく覚悟を宣言しているとも言える。私はそんな作者の泥臭さを、この場を借りて後押しさせていただきたい。
(山田遼志/アニメーション作家)
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— 服部グラフィクス15周年 (@hattori2000) June 4, 2022
「Astronaut」(2021) pic.twitter.com/NNOt8T3BNW
授賞理由
作品の左上に見える7種類のドット絵のパレットを用いた実験的GIFアニメーションという本作は、まさにタイトル『Astronaut』にふさわしいピクセルアートの宇宙を見るようであり、作者の応募作品の中で抜きんでていると感じた。視覚に激しい混乱がもたらされながら、ずっと見ていたいと思える気持ちの良い浮遊。もはや職人芸といえるピクセルアート作品を発表し続ける作者は、ビジュアル的なお洒落さではなく、圧倒的な密度による驚きを突き詰めている。低解像度という自ら設けた制限を美学で大きく超えるGIFアニメーションに敬意をこめて、審査員特別賞を送ります。
(小野朋子/映画祭チーフ・ディレクター)
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— Nata Metlukh (@notofagus) April 27, 2022
授賞理由
大胆にパースをつけたダイナミックかつのびやかなアニメーション、余白を活かした画面構成、くすっとさせる洗練されたユーモアが魅力的。母国ウクライナを想いながら制作されたという本作。アニメーション映画/シリーズの制作は、一般的に、気の遠くなるような労働集約的作業を必要とし、それゆえに同時代的な関心を瞬時に反映するのが困難とされる。いままさに起こっているできごとに反応した本作は、GIFアニメーションならではといえよう。他方、本作は、同時代的な特定のできごとを背景としつつも、気の利いた寓話化によって、さまざまな種類の暴力に対する抵抗というふうにも解釈できる普遍性を有する。その点も、積極的に評価した。GIFアニメーションは、映画やTVシリーズと比較して、SNSを通じてより開かれた表現形式であろう。虐げられる弱者をエンパワメントする意図が込められた本作においては、GIFアニメーションという表現形式こそ、理にかなっている。
ここまで授賞理由を書きつらねてきたが、まとめると、ビジュアルの魅力もさることながら、総じてGIFアニメーションという表現形式の特性を熟知し、活用することで、社会に対して芸術的に介入せんとする作者の手際こそ、審査員特別賞に値すると判断した。
(田中大裕/アニメーション研究者、tampen.jp編集長)
授賞理由
GIFならではのループを活かしながら、指先が触れる瞬間を、今か今かとずっと魅入ってしまう、とても魅力的な作品です。本作品のモチーフとなっている「アダムの創造」は神がアダムに生命を吹き込もうとする、まさにその瞬間を描いた作品で誰もが知る宗教画です。アダムと神の指先が触れるその瞬間を裏側から見せてくれるユニークなテーマ、GIFならではのループを活かした作品として選出をさせていただきました。
(株式会社GIFMAGAZINE 大野謙介)