アワード
第9回 新千歳空港国際アニメーション映画祭のコンペティション部門ノミネート作品のなかから、国際審査委員による厳正な審査を行い、各賞を決定いたしました。
Backflip
後方宙返りを行うのは安全ではない。首を骨折したり、頭を地面に打ちつけたり、着地の際に手首をひねったりする可能性がある。そのどれもが好ましくないため、自分のアバターに挑戦させることにした。機械学習の助けを借りて6コアプロセッサで練習する。プロセッサは最新のものではないが、それでも1つの反復で6回のジャンプを計算できる。1つの反復には1分かかるので、1時間に360回、1日に8640回ジャンプできる。自分でそんなにジャンプすることは不可能だ。
Nikita Diakur
ニキータ・ディアクルはロシア生まれの映像作家で、ドイツを拠点に活動している。『Ugly』と『Fest』の作品で名を知られ、世界で開催された多くの映画祭で批評家たちより絶賛された。彼の作品の特徴は自発性・ランダム性・エラーを取り入れたダイナミックなコンピュータ・シミュレーションだ。
- 授賞理由
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Yoshi Sodeoka
多くの人がテクノロジーを深刻に捉えすぎています。しかし、テクノロジーはしばしばばかげていて不完全なもので、でもそこには魅力的なものがあるのです。そして彼は、この素晴らしい短編映画でそのことを完璧なコメディに仕上げました。私を笑わせてくれた彼に感謝したい。
TOCHKA
合成された声、不完全な像、奇妙な動き。計算が生み出したものなのに、それはまるで赤ちゃんの様にいとおしく、その成長を映画館という空間でみんなが応援します。はじめは「バカっぽくて付き合いきれない」なんて思っていたのに、いつのまにか徐々に成功していく様に一喜一憂していました。アニマ(魂)が吹き込まれた瞬間に立ち会ったような感覚を覚えました。
小瀬村真美
作品の構造自体の新しさに映画の方向性の広がりと可能性を感じます。一方向の視点やストーリーではなく、作者がプログラムと格闘し、上手くいかないプロセス、エラーや失敗自体が作品化され、また、そのプロセスを作品のいわゆるコメンタリーという形で自己のアバターに語らせる構造に、単なるユーモアの追求だけではない作品のあり方の意味を感じました。面白かった。ありがとうございます。
無法の愛
真夜中。工事現場。カラーコーンを頭にかぶせられた警備員がひとり。同僚からはイジメられ、愛車は盗まれ、夢である警官にもなれず、男は苛立っていた。そんな彼の目の前に、自転車に乗ったピンク髪の美女が現れ…。一組の男女が出会い、この素晴らしき世界を大爆走する、愛の四半世紀。新感覚ボーイミーツガールクライムサスペンスジェットコースタームービー。
鈴木 竜也
1994年、宮城県生まれ。映画監督を目指しながら、歌舞伎町のバーで雇われ店長をしている。コロナをきっかけにアニメーション制作を始め、一作目『MAHOROBA』が国内で数々の賞を受賞。制作は全て1人で行なっている。
- 授賞理由
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Yoshi Sodeoka
プロットは巧妙でウィットに富んでおり、優れた色使いと構図がそれをさらに引き立てています。 縦長と横長のフォーマットの使い方は、心地よい意外性がありました。 スマートフォン世代の最高の短編映画の 1 つです。
TOCHKA
映画祭なんか知らない、ショート動画中毒者を生み出し続ける社会に一石を投じようとした作品かもしれません。それぞれのカットがいろいろな映画のオマージュに溢れており、飽きさせません。世界観に身を投じ、先が気になりだした中盤で画面が縦長から横長に回転します。それは、スマートフォンを回転させてワイド画面で見ることを促しており、視聴者にさらに世界観に引き込むアプローチです。これは思わず「巧い!」と声がでました。
小瀬村真美
様々な方向から「日本的」な視点について表現しようと実験している作品と感じます。特にスマホの狭い世界観、縦スクロールでの動きや縦構図の使い方が新鮮で、ケータイゲームや既存の映画などの様々なコンテンツからのアイデアソースのサンプリングのような構成方法が新しい映画の制作スタイルを予期させます。
Space
恋愛関係においてパーソナルスペースは重要な役割を持つ。
Zhong Xian
ゾン・シエン(1993年生まれ)は台北とロンドンを拠点に活動するアーティスト兼 フリーのアニメーター。大学では哲学を専攻し、2017年に独学でアニメーターになる。以降、毎日 絵を描いている。
- 授賞理由
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Yoshi Sodeoka
この作品は、レトロとモダンなルックスが混在しているのがとても面白く、それがまたスタイリッシュでとても気に入っています。それに加えて、リズム感や編集が絶妙で、どんどん引き込まれていきました。何度でも何度でも見たくなりました。
TOCHKA
人間同士が生み出すリズムやバイブスまたは化学反応を軽快なサウンドデザインや鮮やかで最小限のコマ割りで見事に視覚化された作品でした。
小瀬村真美
シンプルなのに何度見ても飽きない味わい深い作品です。アニメーション特有の線、色彩、形のリズムの面白さが、そのままこの作品のストーリー、人生の中のリズムとリンクしながら表現されているという素晴らしい簡潔さに、改めてアニメーション技法の可能性を感じました。
Another Presence
認知症の中でも3番目に多いレビー小体型認知症(DLB)になった人たちのユニークで、しばしば興味深い体験について語った作品。様々な感覚が低下することから、他の疾患にはない、夢を見ているような幻視の症状を引き起こすことがある。レビー小体型認知症の人たちの証言を通して、シュールであまり知られていない認知症の影響について描き、私たちの脳の働きや、自分たちの感覚に対する信頼性について問いかける。
Simon Ball
サイモン・ボールは受賞経験を持つ映像作家 兼 アニメーターで、抽象的な作品や、ドキュメンタリーおよび商業的プロジェクトを手掛ける。ザイ・タンとコラボした抽象的な作品は世界で上映 及び展示されている。彼の最新のドキュメンタリー作品『Do I See What You See?』は、珍しいタイプの認知症の人たちについて描いており、マンチェスター・アニメーション・フェスティバルにて最優秀作品賞を獲得。科学界においても幅広く上映され続けている。
- 授賞理由
- これは、私がほとんど知らなかった複雑な病気についての、感動的でとても教育的な映画です。 美しくアニメーション化されており、自白のナレーションと完全にマッチしています。複雑な問題を教育するために説得力のある視覚芸術がいかに効果的であるかを示しています。
Sliver Cave
洞窟の中に入っていくと、松明のせいで視界が揺らぐ。左から右へ、上から下へ。あなたの前にあるスクリーンも同じだ。それは家畜化と欲望を提示した境界のないトンネルだ。
Caibei Cai
ツァイベイ・ツァイ(1992年 中国 深セン生まれ)は2017年に江南大学、2018年には英国王立芸術大学院大学で修士号を取得。スクリーンで繰り広げられる錯覚に夢中になり、映像には身体があると信じている。フレームごとに描くことで隠れた体を捉えるのが得意。彼女の術策の素材には、指紋のほこり、反射した鱗、ピクセルで描いた涙、形が変わる尻尾などがある。彼女の映画は常に身体の内で起きる葛藤と、身体の外の不安な環境を体験するよう観客を誘う。
- 授賞理由
- 金属板に刻まれた凹凸から生み出される強い光と影を媒体とする奇妙なアニメーションが網膜に焼き付きました。付着した指紋や作業痕や濡れた足跡は確かにそこにあった身体を感じさせます。再生と停止のリフレインは、生と死のサイクルの様でもあります。化石に埋め込まれて保存された太古からの生命の営みの記録や割れた鏡に映った無人の映画館の座席は映画メディアの終わりをも感じさせます。一眼レフからスマートフォンへと変遷する撮影機と、そこへ移りこむおぼろげな人間の鏡像。これらは、身体をメディアに吹き込もうとする意欲作であると感じました。
Epicenter
地震の影響により、北漢山が日々成長している。空想と現実の世界を分断していた壁に少しずつ亀裂ができ始め、ある者が目に見えない世界の存在に気づき始めた。
Hahm Heeyoon
1994年に韓国のソウルで生まれる。2019年に弘益大学の美術学科を卒業し、2020年には韓国芸術総合学校でアニメーションを学ぶ。
- 授賞理由
- まずは絵作りの緻密さに驚かされます。何気ない普段の日常をなるべくそのまま写し取ろうとする意識の細やかさを、物の描かれ方や、ほんの少しの動きの選択への注意のはらわれ方の中に感じました。何かが起ころうとする前触れや不穏さを主題としていますが、しかし描き方はあくまでも淡々と平常の延長の出来事として描こうとしているところに作者の特性とバランス感覚の良さを感じました。
マイ・ラブ・アフェア・ウィズ・マリッジ
ゼルマは幼い頃から歌やおとぎ話の影響で、「女の子はこうあるべき」という社会の期待に応えさえすれば、愛がすべての問題を解決してくれると信じ込んでいた。しかし、大人になるにつれ、愛という概念に何か違和感を覚えるようになる。適合しようとすればするほど、彼女の体は抵抗するようになるのだ。女性の内なる反抗を受け入れる物語。
シグネ・バウマネ
シグネ・バウマネはブルックリンを拠点に活動するラトビア出身のインデペンデント映画監督、アーティスト、作家、アニメーターである。これまでに17の短編アニメーションを制作し、賞を受賞しており、中でも初の長編アニメーション『ロックス・イン・マイ・ポケッツ』が最もよく知られている。この作品は、彼女を含む一族の女性たちの100年にわたるうつ病と自殺の歴史を描いている。2014年のカルロヴィ・ヴァリ国際映画祭でプレミア上映された後、130以上の国際映画祭に出品され、米国ではツァイト・ガイスト・フィルムズを通じて劇場公開された。シグネの新作アニメーション『My Love Affair With Marriage』は、アニメーションに音楽、演劇、科学、写真、3D、伝統的な手描きアニメーションを融合し、完璧な愛と長続きする結婚を求める元気な若い女性の物語を描いている。グッゲンハイムフェロー、ニューヨーク芸術財団の映画部門フェロー。モスクワ国立大学で哲学の学位を取得。
- 授賞理由
- クリエイティブで知的な女性が、ジェンダーロールとアイデンティティの葛藤に少女時代から悩みながらも自分なりの答えを見つけていく物語です。主観的に語られると思ったら否や、体や脳で起こっていることを分析し化学的に解説したりと、視点が寄ったり引いたりするテンポが小気味よく引き込まれていきました。神話やミュージカルを組み込んだ巧みなストーリーテリングにより個人的な物語が、普遍性のある物語に昇華されています。
バーバー・ウェストチェスター
バーバー・ウエストチェスターは将来有望な天文学者で、自分の人生のすべてを無視しようとしている。NASAでインターンをすることになったバーバーは、何もかも見ないようにすることが難しくなり、代わりに人としてのあり方を学ばなければならなくなる。
ジョニ・フィリップス
ジョニ・フィリップスは、カリフォルニア出身の映画監督。監督作には、『The Final Exit of the Disciples of Ascensia』『Goodbye Forever Party』『Secrets and Lies in a Town of Sinners』『Rachel and her Grandfather Control the Island』などがある。2021年には90分の長編アニメーション映画『バーバー・ウェストチェスター』を自主制作し、公開した。
- 授賞理由
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この映画はアニメーションという技法の「意味」「力」「可能性」を最大限に体現している。
ビジュアルは全て周到に計算され、侮ると強烈なパンチを喰らう。
独自のスタイルは、より強く時代を打ち抜く為に導き出され、その描線はキュートに見せかけて、実は恐ろしく繊細。
トリッキーなモーションで見る者を巧みにストーリーごと絡めとって行く。90分が過ぎた時(即ちこの映画の終盤)描くテーマと手法の合致に震える。アニメーションである事への覚悟と確信。
自分の中の大切な何かが揺らぐ時、世界はあまりに薄っぺらで支えてはくれない。
目に見えるものの不確かさと、見えないものの確かさの物差しはどこにあるのか? 答えを求める切実な思いで研ぎ澄まされる今この時代の気分を写しながらも、楽しませる工夫と独自性の追求を高度に融合させた、“規格外”の映画である。‘20年代最も重要な発見。 アニメーション映画のあり方の本質を問う作品であり、それについて活発な議論を世界に促す点で、 アニメーション映画祭の本質も同時に問われていると感じた。
Mom, What’s Up with the Dog?
Gwenは11歳になったばかりの女の子。自分のセクシュアリティに目覚めた彼女は、飼い犬が笑っているのを目撃する。
Lola Lefevre
2021年にフランス、セーヴルのAtelier Supérieur d'Animation を卒業。『Mom, What's Up with The Dog?』(2021)は彼女の卒業制作作品。
- 授賞理由
- 少女の性の目覚めというまだ語られ足りていない題材を、笑う犬という意外な組み合わせで表現した大胆かつユーモラスな作品です。人間社会で作られた道徳や恥の概念VS野生の本能。犬を真似ながら、動物的側面を開花させていく少女の姿には解放感さえ感じました。夜に駆け出していく犬はどこに向かっていくのか…。象徴的なアイテムや構図を繰り返し登場させることでパワフルでインパクトのある作品に仕上がっています。
Goodbye Jérôme!
楽園に到着したばかりのJeromeは、妻のMarylineを探す旅に出る。その過程で、誰も助けることのできない超現実的で色彩豊かな世界へ深く入り込んでいく。
Gabrielle Selent, Adam Sillard, Chloé Farr
フランスのGobelinsでアニメーションを学ぶ。70年代カルチャーとチャンキー・シューズが好きな3人。『Au devoir Jérôme!』では、笑える、ほろ苦い物語を書き下ろした。3人の姿と彼らのロマンチックな別れをミックスしたユーモアある作品となった。
- 授賞理由
- 愛する妻を追って天国にやって来たジェロームは、やっと再会できた彼女から思いもよらぬ言葉を聞く……サイケデリックでカラフルな美術の中にコミカルなキャラクターが快適なリズムで動きまわる様は、ジョージ・ダニング監督の1968年作『イエロー・サブマリン』や日本の作家・久里洋二の作品のような、アニメーションの可能性に素朴な興奮があった時代の楽しさ、軽やかさを思い出させもするが、ユーモアと共に明らかになる愛の不調和は極めて今日的でもあり、よりどころを失っても、もはや死ぬことも出来ない主人公の孤独が画面を優しいペーソスで満たす。音楽、効果音の使い方も巧みで、ストーリーの展開に対する時間配分も申し分なく、短編アニメーションとしての完成度が極めて高い、エスプリに溢れる逸品である。文字通り「犬」の姿で主人公に寄り添う、歩くホットドッグが愛らしく、助演動物賞も進呈したい。
Sliver Cave
洞窟の中に入っていくと、松明のせいで視界が揺らぐ。左から右へ、上から下へ。あなたの前にあるスクリーンも同じだ。それは家畜化と欲望を提示した境界のないトンネルだ。
Caibei Cai
ツァイベイ・ツァイ(1992年 中国 深セン生まれ)は2017年に江南大学、2018年には英国王立芸術大学院大学で修士号を取得。スクリーンで繰り広げられる錯覚に夢中になり、映像には身体があると信じている。フレームごとに描くことで隠れた体を捉えるのが得意。彼女の術策の素材には、指紋のほこり、反射した鱗、ピクセルで描いた涙、形が変わる尻尾などがある。彼女の映画は常に身体の内で起きる葛藤と、身体の外の不安な環境を体験するよう観客を誘う。
パニック・イン・ザ・ヴィレッジ サマー・ホリデー
学校も終わり、退屈し始めたインディアンとカウボーイはボートを作って冒険の旅に出ることに。でも最初の挑戦は大失敗。動物たちの助けを借りて、ようやく自慢の船を完成させる。しかし、もちろん計画通りにいくはずもなく…。
Vincent Patar, Stéphane Aubier
2人はベルギー、リエージュにあるSaint-Luc Fine-Arts Institutで出会う。1986年、ブリュッセルの美術学校La Cambre (ENSAV)に入学、1991年卒業。1988年、2人にとって初の短編映画となる『Pic Pic Andre Shoow』を監督し、彼らが描く「狂気の世界」の礎を築く。2001年には、ミニチュアが不条理で奇妙な冒険をする『A Town Called Panic』を制作。
パニック・イン・ザ・ヴィレッジ サマー・ホリデー
学校も終わり、退屈し始めたインディアンとカウボーイはボートを作って冒険の旅に出ることに。でも最初の挑戦は大失敗。動物たちの助けを借りて、ようやく自慢の船を完成させる。しかし、もちろん計画通りにいくはずもなく…。
Vincent Patar, Stéphane Aubier
2人はベルギー、リエージュにあるSaint-Luc Fine-Arts Institutで出会う。1986年、ブリュッセルの美術学校La Cambre (ENSAV)に入学、1991年卒業。1988年、2人にとって初の短編映画となる『Pic Pic Andre Shoow』を監督し、彼らが描く「狂気の世界」の礎を築く。2001年には、ミニチュアが不条理で奇妙な冒険をする『A Town Called Panic』を制作。
我々の2
この映画はダンテ没後700周年を記念企画として、「新生」から「神曲」の地獄編・煉獄編・天国編に続くダンテとベアトリーチェの再会の物語を再解釈して作られた。「今」、若い我々はどこにいるのか。我々はどこへ向かえば良いのか。2020年から続くこの状況。我々は何でも自由に選べる。死を選ばず、生をも、愛をも選択出来る。新しい世界の到来。自己愛と他者への愛を重ね合わせて向こうの世界へジャンプしよう。これはまさしく若くて脆い我々への献呈詩。
Song Yungsung
韓国生まれの短編アニメーション映画作家。日本で美術と映画制作を学ぶ。カンディンスキーやドローネー、マティスなど20世紀初期の絵画から影響を受け、アニメーション手法にアプローチをする。『我々の2』(2021)、『創造的進化』(2019)などを監督した。
- 授賞理由
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*新千歳空港賞は、映画祭実行委員会が、全ての応募作品のうち、日本を含むアジア地域で制作された優れた作品に授与します。
よどみないメタモルフォーゼで、細い一本の線までもが呼吸し声をあげている。時に抱擁も破壊をもともなう他者と、わたしたちの世界を生み出す様に茫然とし、深く感動しました。
Yugo
田舎の故郷を余儀なく追い出された男女の旅路を生涯にわたり描き、ラテンアメリカの資本主義と自由主義経済の発展、環境および社会的変化が人間に及ぼす影響について問いかける。
Carlos Gómez Salamanca
カルロス・ゴメス・サラマンカの作品は絵と視聴覚言語に大事にしている。最近の作品では母国のさまざまな社会的・文化的な側面を批判的な視点から探るアニメーションを制作するため、映像と視覚的アーカイブを再構築している。
- 授賞理由
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*外務大臣賞は、インターナショナルコンペティション入選作品のうち、現代社会の在りようを反映した寓話的優秀作品に授与します。
移民、労働、進行し続ける病。肉体と精神をエネルギーとせざるを得ない経済システムは決して他人事ではなく、10分間画面に釘付けになるほどの緊張感がありました。
キツネたちの女王
もう一度女王の笑顔が見たいと、キツネたちは街のゴミ箱をあさり、送られることのなかったラブレターを探す。
Marina Rosset
1984年、スイス、ローザンヌ生まれ。ブリュッセルのENSAV La Cambreとthe Lucerne School of Art and Design (HSLU)でアニメーションを学び、2007年にHSLUを卒業。以来、短編アニメーション映画の脚本、監督、作画を手掛ける。また、映画編集者、イラストレーターとしても活動中。
- 授賞理由
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*観光庁長官賞は、インターナショナルコンペティション入選作品で、こどもを含む青年から広く対象とした中のうち、普遍的な表現の中でも光る現代性を感じる作品に授与します。
簡潔な絵でありながらもキャラクターの感情がありありと伝わってくるアニメーションからは、作者のすぐれた技術力を感じさせます。物語もすばらしく、女王が冠を置いて仲間のもとへ行くラストに心洗われました。
うつくしき動物たち
昨年の夏は何処にも行かず、とある廃墟の壁にむかし遊んだ友達の動きをロトスコープして過ごした。その記録。
菊谷 達史
1989 北海道稚内市生まれ
2011 金沢美術工芸大学美術工芸学部美術科油画専攻卒業
2013 金沢美術工芸大学大学院修士課程美術工芸研究科絵画専攻油画コース 修了
現在石川県を拠点に制作
- 授賞理由
- コロナ禍の夏を通して廃墟に描いたという本作は、本来殺伐とした風景にも記憶の堆積があると気づかされる、1分半の永遠です。
ミニミニポッケの大きな庭で
縮んだはずが膨らんで、浮かんだときは沈んでる。 離れたつもりが繋がって、見てると思えば見られてる。 観察、記録、実験しながら日々を紡いだ、いとをかしアニメーション詩。
幸 洋子
1987年日本の愛知県生まれ、東京都在住。日常の出来事からインスピレーションを受け、様々な素材を使ったアニメーション作品を制作している。主な作品に、幼少期の曖昧で不思議な記憶をもとにした『See ya Mr.Banno!』、海辺の町で出会った見知らぬ人との一日を描いた『Zdravstvuite!』、現代アーティスト鴻池朋子の詩をもとにした『A Snowflake into the Night』、音楽家清水煩悩と共同制作したミュージックビデオ『ShalaBonBon』などがある。
- 授賞理由
- 自由奔放かつよどみないアニメーションの魅力に圧倒されました! 子どもの頃にクレヨンを握りしめてまっさらな画用紙に向かったときのワクワク感がよみがえってくるようでした。
鬼、布と塩
遥か前、鬼たちと村人たちは、少しだけ離れた別々の山で暮らすことにした。しかし長い時間が流れる中、その約束はもう皆から忘れ去られている。木にくくりつけられた布は曖昧に互いを遮断し、塩は曖昧に互いを繋げようとする。村人たちの不安に武士らが駆けつけるが、何が恐ろしいものなのか、皆が判らないでいる。
西原 美彩
1991年 広島⽣まれ。広島市⽴⼤学芸術学部・広島市⽴⼤学⼤学院でアニメーションを学ぶ。現在、広島市⽴⼤学芸術学部映像メディア造形 ⾮常勤助教。今回の制作中に、とんがった(鋭い)造形のものは何かしら権威や強さを持っているのでは!と思った。神楽や⻤が好き。
- 授賞理由
- 桃太郎などの昔話に出てくるような鬼や村人や武士とは異なる曖昧な関係がとても洗練されており、また現代的な印象も与える作者の力量に驚きました。
憶えていて
『憶えていて』において、画⾵が変わるにつれて、「画家になりたい」という⼦ども時代の夢から物語を語り、それらの記憶に関わる⼈物・場所・事件を巡って脳内での情報収集を⾏なった。鑑賞者はこの作品で、作者の⼦ども時代の画⾵からはじめ、年齢が重ねるにつれて、絵画スタイルの漸次的な変化を⾒ることになる。「鮮明な記憶」がストーリーのフレームを築き上げ、同時に叙事の部分になる。また、「曖昧な記憶」も不確定性が存在するため、これらの曖昧部分については線・同⾊絵・メタモルフォーゼなどの⼿法を試みた。『憶えていて』中にはアートスタイルの並置は叙事⼿段として使うだけではなく、直接にストーリーそのものの⼀部として有機的に活⽤した。その中でアニメーションの特性を利⽤し、画⾵の変化を通して⾃分の成⻑を間接的に暗喩した。
Wei Man
中国重慶市⽣まれ。中国伝媒⼤学アニメーション学科卒業後、ゲーム会社と広告会社を経て、武蔵野美術⼤学造形研究科映像コースに⼊学した。修⼠終了後同⼤学の博⼠後期課程に進学し、2022年3⽉に博⼠号を取得した。その後、中国に帰国し、制作と理論研究とアニメーション教育を並⾏して活動を展開している。
- 授賞理由
- さまざまな画風で描かれたアニメーションは、作者の子ども頃の記憶を、映画の中にありありと浮かびあがらせます。心象風景を追体験させるための手際に感心しました。
四時間目のプール
主人公は体と心の成長過程において、周りと自分を比較して居心地の悪さを感じている子供。ある日のプールの授業で、彼女は気になる同級生のアヤの泳いでいる姿に圧倒され、恋心を自覚する。
小林 真陽
1994年東京生まれ。2018年東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業。2022年東京藝術大学大学院映像研究科アニメーション専攻修了。
- 授賞理由
- 少女の成長と誰にも言えない秘密。見ているこちらがドキドキするような心の変化がとても繊細に、そして丁寧に描かれていて感動しました。
ぽぷろい放送局
ポップコーンの惑星で生まれた宇宙人「ぽぷろい」が、自らの経験を映像化するドキュメンタリープロジェクト。ぽぷろい放送局をYouTubeにて開設し、配信を予定している。
- 授賞理由
- 映画祭自体も新しさ、存在意義を拡張していきたい思いの中、もしかしてこんなこともできるのではないかともっともワクワクした気持ちを優先した。またティザー映像も今現在個人で作り込まれているレベルで圧倒された