MENU

2022年11月3日(木)~6日(日) 新千歳空港ターミナルビルにて開催

第9回 新千歳空港国際アニメーション映画祭 2022.11.3 – 11.6  会場:新千歳空港ターミナルビルにて開催

みんなで話そう!アニメーションはこんなに面白い短編部門選考委員座談会

第2回

インターナショナルコンペティション1〜4それぞれのテーマ

―インターナショナルコンペティション1 (→作品一覧はこちら)

小野

本来であればすべてのノミネート作品を紹介したいのですが、残念ながら時間も限られているので、ここからはいくつか作品をピックアップして紹介していきましょう。まずは「インターナショナルコンペティション1」から。「インターナショナルコンペティション1」は、本年のコンペティション短編部門のある種ハイライトのような位置づけです。何を見るべきか迷ったら、まずは「インターナショナルコンペティション1」を見てもらうのがいいかもしれない。

ニヘイ

Sean Buckelew監督の『Drone』は、最初から満場一致で「これは絶対にノミネートだよね!」というかんじでしたね。

『Drone』
『Drone』

高度な人工知能を搭載した米軍のドローン機を主人公に、人工知能という異質な存在を通じて、人間の本性をあぶりだす作品です。ネタバレになってしまうためここで詳細は語れないのですが、ストレートなエンターテインメント作品でありながらもラストはアイロニカルな展開で、そこにぐっときました。

Sean監督の作品は、過去にも本映画祭にノミネートされていますが、風景描写に独特な魅力があって、さりげない風景描写が、映画的というか、すごく美しいと感じています。本作は、新しい背景美術アーティストと組んで制作したらしく、そのおかげか、過去作からさらに(風景描写が)よくなっていて、映像面から物語をぐっと持ち上げている印象です。そういうところに注目して見てもらうのも、おもしろいかもしれません。

岩崎

Nikita Diakur監督の『Backflip』も同じく満場一致でした。

『Backflip』
『Backflip』

ケガをするのが嫌なので自分自身を模したアバターに代わりにバク転の練習をさせるという内容で、滑稽ですごく笑えるんだけれども、見ているうちにどんどんアバターを応援する気持ちになってきて、最後にはちょっと感動してしまうという(笑)。

Nikita監督は、メタCGアニメーションとでも言いますか、グリッチ表現などを積極的に導入することでCGアニメーションの自己言及性みたいなものを前面に押しだす作風で知られています。本作は、まさしくそうしたメタ的な作品と言えますが、コンセプトが魅力的というだけではなく、誰もが笑える作品に仕上がっている点がすばらしいなと。

個人的には、Wendy Tilby監督とAmanda Forbis監督による新作『The Flying Sailor』を上映できるのもうれしいです。

『The Flying Sailor』
『The Flying Sailor』

おふたりは短編アニメーションの世界では誰もが知るカナダを代表するアニメーション作家で、代表作の『ある一日のはじまり(原題:When the Day Breaks)』がカンヌ国際映画祭の短編部門パルムドールを受賞するなど、絶大な評価を誇るデュオです。

本作は、1917年に実際に起きた「ハリファックス大爆発」を題材にしていて、爆発に巻き込まれた水兵の脳内を一瞬にして駆け抜ける走馬灯のような記憶を描いた作品です。構成自体は単純ですが、ユーモアとサスペンス、「ひとりの人間が存在するというのはどういうことなのか?」というような哲学的な問いまで、さまざまな要素がぎゅっと凝縮された見ごたえのある短編アニメーションです。

―インターナショナルコンペティション2 (→作品一覧はこちら)

小野

次は「インターナショナルコンペティション2」です。「インターナショナルコンペティション2」は、社会に対する批評的なまなざしにすぐれた作品を集めています。なかでもJie Shen監督の『Tiger Stabs Tiger』は選考会議でも議論が紛糾しましたが——。

『Tiger Stabs Tiger』
『Tiger Stabs Tiger』
倉重

そうでしたね(笑)。僕と田中さんは最初からこの作品を推していて、個人的には今年選考した中でもっとも印象に残った作品でした。退屈に感じられるかもしれませんし、昏くて、陰惨で、見る人によっては耐えがたいストレスや嫌悪感をおぼえるかもしれませんが、アニメーションによるまったく新しい時間表現に挑戦していて、アニメーションの可能性を切り拓いていると感じましたので、映画祭の役割としてこういう作品も上映したいと考えました。

具体的には「間」の描き方がこれまでのアニメーションとはまったく異なっていて、それは単純に言えば「間」が長いということなのですが……、余韻を生みだすための「間」ではなくて、重々しくて、息苦しい、時間そのものの質感を描きだすような「間」の表現になっています。居心地の悪い状況に強制的に放り込まれてしまったような、そんな時間感覚を呼び起こす作品です。

岩崎

Dimitris Simou監督の『Tourist』も説明があったほうがいいかもしれません。

『Tourist』
『Tourist』

本作は、息子を失った男がその幻影を求めてさまよう様子を、8ミリフィルム映像のようなザラザラとした質感の3DCGで描いています。映像自体がユニークなので、何も考えずに見ているだけでも惹きつけられるのですが、注意深く見ていくと、エーゲ海渡航中に亡くなる難民の問題を描いていることがわかります。

アニメーションで社会問題を描く際に注意しなければならないのは、アニメーションは多かれ少なかれ抽象化して描くので、失敗すると問題をむやみに単純化してしまう懸念があることです。その点この作品は、抑制的で、非常にバランス感覚にすぐれた語り方をしていて好感を持ちました。

―インターナショナルコンペティション3 (→作品一覧はこちら)

小野

続いて「インターナショナルコンペティション3」です。「インターナショナルコンペティション3」は、「オルタナティブなビジョン」をテーマに、ユニークな世界観を持つ作品を集めました。本年のコンペティションの中でもっとも抽象性の高いテーマを設定しています。

田中

どの作品も魅力的ですが、初見でもっとも衝撃を受けたという意味では、Hahm Heeyoon監督の『Epicenter』には驚愕しましたね。

『Epicenter』
『Epicenter』

作品のスチルを見ていただければわかるとおり、とても緻密な鉛筆画で描かれていて、まずそのビジュアルに目を奪われました。

地震のあと、日ごと山が成長しているのに主人公だけが気づいているという設定なのですが、物語らしい進展はほとんどなく、ありふれた日常の風景が奇妙な違和感に覆われていく様子を、淡々と、しかし退屈にはならないギリギリのバランスで描いています。画面の変化こそ小さいですが、シャワーを浴びているときに視界に映るささいな変化にビクッとしてしまうような、そんな緊張感に全編が満たされています。現実が非現実に徐々に侵食されていく不気味さを感じさせます。

―インターナショナルコンペティション4 (→作品一覧はこちら)

小野

最後は「インターナショナルコンペティション4」ですね。「インターナショナルコンペティション4」は、本映画祭が考えるエンターテインメント性にすぐれた作品を集めました。

私が紹介したいのは、Balázs Turai監督の『Amok』です。

『Amok』
『Amok』

本作は、世界最大のアニメーション映画祭である、フランスのアヌシー国際アニメーション映画祭で、今年の短編部門グランプリに輝いた作品です。主人公の男性が、彼にしか見えない邪悪な小人によって人生を狂わされていく、というようなストーリーが展開されます。

人間の潜在意識をテーマにしたサイコホラーではあるのですが、怖いだけではなく、ある種のユーモアもあって、すごくキュートなブラックコメディーです。ビジュアルもカラフルだし、音楽もかっこいい。圧倒されるエンターテインメント作品です。

ニヘイ

Sophie Koko Gate監督の『Hotel Kalura』もすごく好きな作品です。

『Hotel Kalura』
『Hotel Kalura』

彼女の過去作品もよく知っているのですが、あきらかに前作よりも自分のスタイルが確立されてきている印象を受けました。輪郭線のないモコモコとしたデザインもユニークで興味深いですし、色彩もすごく美しくて、造形面の完成度がぐっと増しています。

物語も魅力的で、皮肉っぽいユーモアとか、哀愁を感じさせるラストもすごく良いなと思いましたね。

⓷は後日公開

新千歳空港国際アニメーション映画祭

事務局
〒060-0001
北海道札幌市中央区北1条西2丁目1番地
札幌時計台ビル9階 株式会社えんれいしゃ内
電話
011-206-1280
(受付時間:平日10:00〜18:00、土日祝休み)
Mail
info@airport-anifes.jp

page_top